2006〜2007.3まで居た拍手お礼小ネタ。
『根暗姫』
むかしむかし、あるところに、お姫さまがいました。
お姫さまはたいそう美しく、黒炭のように黒い髪、雪のように白い肌、血のように赤い唇をしていましたが、その美しさを補って余りあるぼどに大変な根暗
だったので、「根暗姫」と呼ばれていました。
「フ…フ・フフ…。今にわての美しさに嫉妬したお妃はんがやってきて、わては殺されかけてしまうんどす…。
あぁっ不幸なわて!シンタロー はぁ
んっ!助けておくれやすぅ〜っ!!」
お姫さまは毎日そんなことを呟き(叫び)ながらひっそり(じめじめ)と暮らしています。
お妃さまはそんなお姫さまを変わっていると思いこそすれ、羨ましいとは欠片も思いませんでした。
「なぁトットリィ〜、アラスヤマがまたなんか言うとるべ」
「ははっ、気持ち悪いヤツだっちゃね〜。世界で一番美しいのはミヤギくんに決まってるっちゃ!」
「正直すぎるべトットリはぁ〜っ」
そんなこんなで結構みんな幸せに暮らしていましたが、そうすると話が進まないので強引にもってくことにします。
ある日、お妃さまは無性に鹿肉が食べたくなりました。
「鹿肉ぅ〜っ?オラどっちかっつぅと猪のほうが…」
「あ!ミヤギくん!とりあえず猟師を森に行かせてアラシヤマを捨ててこさせるのはどうだらぁかっ!?」
「ナイスだべトットリ!いいかげんアイツの独り言にもうんざりすてきたところだべ!コージ!コージ!!」
猟師は根暗姫をつれて森へ行き、奥深くへ置き去りにすることにしました。
そこは化け物が出るとの噂がある不気味な場所でしたが、根暗姫は上機嫌でした。
「これでわてはシンタローはんとっ…!おおきにコージはん!感謝しますえ〜っ」
「ワシの出番はこれだけかっ!?」
猟師はなんだか馬鹿らしくなって、このまま帰ってしまおうかとも考えましたが、そうするとあとでお妃さまの鏡にどんな嫌味を言われるか分からないと思
い、しぶしぶ猪を捕って城へ帰りました。
首尾よく根暗姫を厄介払いしたお妃さまと下撲…もとい鏡はご機嫌で牡丹鍋を頬張りました。
あとは隣国の王子さまが根暗姫を助けるのを待てば話にも形がつきます。
「あ、ミヤギくん、シンタローから手紙が届いてるっちゃ」
「あんだべ…なになに、『眠り姫のコタローを助けに行くからアラシヤマの始末はまかせた』」
「始末…ってアレじゃ駄目なんだらぁか?」
「………ま、いいべ」
「だっちゃ」
と・いうわけで、隣国の王子さまは根暗姫を助けには現われず、当然根暗姫は隣国に嫁ぎに行くこともなかったので、結局根暗姫は森に放置されることになり
ましたが、誰も文句は言いませんでした。
城はいつまでも平穏で、時たまあの森の中から獅子舞の笑い声と複数の人間の悲鳴が聞こえる以外はみな楽しく暮らしましたとさ。
◆オマケ◆
「…馬鹿弟子が『白雪姫』パロで『根暗姫』ならば、私は『ツンデレラ』だな」
「えっ、ちょっとマーカー!何処でそんな言葉覚えたの!!?」
「気にするな……きっと意味は分かっていない」
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