「一晩雨に濡れたからってかー?」
「でもオラたちも濡れたけど何ともねぇべ?」
「河に入ったからかのう」
「熱してたもんをいきなり冷やしたからじゃないんだらぁか?」

「「「「情けないヤツ」」」」

「………いっくし!」




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天国の門      (戦場の二人に30のお題)


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シダル国での仕事は大成功だった。
洪水で敵を一気に押し流し、残りカスをミヤギ・トットリ・コージ・アラシヤマ、そして完全復活したシンタローのそれぞれが各個撃破。
見事な手際と賛辞をあび、大量の報酬を受け取っての堂々たる凱旋のはずだった。



………約一名が風邪などひかなければ。





「ゥゲッホ・ゲホッ…っくし!…ぅー、ずび」

咳き込み、くしゃみをし、鼻水をすする音が飛空艦内に響く。
それまで好き勝手に喋っていた4人は音源に顔を向けながら各々違った反応を見せた。

「なんじゃいアラシヤマ。寒いんか?」
「自分で火でも付けりゃええべ」
「艦は燃やすなよ。テメェのもんに火ぃ付けろ」
「あ、でも蝋燭ならあるっちゃよー」

爽やかな笑顔を浮かべながらトットリが取り出したのは仏壇用の蝋燭で。

「いらっ・ケホッ!ゲホゴホ…コホ…」

思わず大声を上げたアラシヤマはすぐに咳き込み、その後の言葉を続けることが出来ない。
恨みがましい目でトットリを睨み付けるばかりだ。
普段ならすぐさま火柱がたつのだが、風邪のせいでうまく炎を調節できないらし い。

それを見てか、トットリはアラシヤマの正面へと進み出て、日頃の恨みといわんばかりに言葉を続けた。

「ザマァないっちゃね〜。格好つけて大技使うとって、挙げ句に風邪!
 だらずの中のだらずだっちゃわいやvV
 馬鹿は風邪引かないって嘘なんだらぁね〜…ぷぷっ (笑)」

とうとうと続く嫌味と隠そうともしてない含み笑いにアラシヤマの肩が震える。
怒りに感情が高まっているというのに炎が出ない。
ただジリジリと燻るばかり だ。


トットリは話すことに夢中だし、他の三人はすでに二人から興味をそらして別の話題に熱中している。

アラシヤマが細長い煙を棚引かせながら暗い目をして目の前の人物を見ていることに、誰も気付かない。



…そのため、誰も次に起こることを予期することができなかった。








―――――――――ボガンッッッッ!!!!!
「ぎゃ―――――――――っ!!!」
突如爆発が起き、トットリの悲鳴が上がる。

何事かと三人が振り向けば、熱気を伴うもうもうとした煙と脇に転がる黒焦げた忍者の姿。
高温で一気に焼かれたためか、外はカリッと中はジューシィに仕上 がっているようだ。

「な…何だぁこりゃぁっ!?」
「あぁっ!トットリぃー!脈がっ脈がねぇっ!!!」
「レア…いや、ミディアムレアってとこかのう」
「んなこといってる場合かーっ!!」

多少混乱しながらもあたふたと忍者の介抱、もとい蘇生を試みる三人。
同時に大量の煙に反応したスプリンクラーが作動して水を流し、煙が徐々にうすくなっていく。




完全に煙が晴れたあとには、
己の出した高熱に自身も焼かれながらも何処か満足そうな笑みを浮かべるアラシヤマの姿があった。







シダル国への遠征は結果として瀕死者二名を出した。
帰還を出迎えた他の団員はその結果だけを目の当たりにして余程困難な任務だったのだろうと考え、
瀕死になってまで任務を達成させた二人への 尊敬の念をさらに深くした。




また、後日、死の淵より帰還したトットリはその親友に「天国の門」を見たと語ったという。





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…これは果たして戦場のお題に入れていいものなのかどうか。
携帯でレポートまとめてるときについつい思考がパプワにずれて打ち込んじゃったものです(笑)
その時聞いてた音楽がイエローモンキーの『天国旅行』だったからこのお題を書いてしまえとか思ったんですけど…
なにやら歌詞とは程遠いものが出来上がりました(凹)

もしかしたらそのうちこっそり書き直すかもしれません。