アラシヤマは待たされていた。
場所は駅に隣接する大型ショッピングモールの中にある眼鏡のチェーン店の前。
相手はアラシヤマとは犬猿の間柄と噂される同僚である。
犬猿でありながらも、いや、犬猿であるからこそ、コンビで任務に当たった場合は仕事の速い二人組である。
お互いに早く相手と別れたいがために、能力以上の力を発揮して仕事に当たる為、彼らの上司はわざと彼らをコンビで組ませることが多い。
今日もそんな任務の帰りであった。
何故任務帰りに買い物などしているのかと問われれば、それは任務中に同僚の変装用眼鏡がわれてしまったからであり、
何故わざわざアラシヤマガ買い物に付き合っているのかというのなら、今回の任務の直前、上司から二人で帰って来いと念を押されたからである。
あまりの二人の仲の悪さに辟易していたのだろうが、面倒くさいことをいうものだ。
アラシヤマはため息をついて店内を見た。
レンズ込で5000円とある棚の前に同僚がいる。
適当なメガネを手に取り顔に当ててははずす、一連の動作を繰り返している。
どうせほぼ伊達に近く普段はしないものなのだから適当に決めればよいものを、一体何をしているのか。
アラシヤマはもう一度溜息を吐き、今度は店内へと足を踏み入れた。
何を悩んでいるのか知れないが、適当に見繕ってやって、とっとと帰ろう。
我ながら珍しいと思うようなことを考えながら、同僚に話しかける。
ああ、この同僚の眼鏡を自分が選んでやったと知ったら、他の同僚たちはどんな反応をするだろうか。
想像で、思わず頬を緩ませながら。
* *
* * *
「ちょ、鼻が低すぎて眼鏡がずり落ちるとか!ありえんやろ普通!さすが忍者はん、常人にはできない真似をようしはりますなぁはははは!!!」
「うっさいだらずが!ケンカ売りんさるくらいやったら独りで帰れや!」