2010年 生存確認の方で書いてたやつのサルベージ!


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「よぉコージ、これやるよ」
出勤と同時にシンタローに小包を渡されて、コージは己の誕生日を思い出した。

そういえば今日だったなぁとぼんやり考えていたが、昼近くになると時間に空きができたのか、他にもぞろぞろと見知った顔が祝いにやって来た。

「コージ!はいこれ、僕と金ちゃんとイバラギから!」
「ほれコージ、このオラが手ずから入れた珈琲だべ!ありがたく飲むべ!」
「僕からは珈琲に混ぜると香りが増し増しになる不思議な水だっちゃ」
「コージ、林檎食っぺか?」
「望みが叶う魔法の薬いりゃーせんか?」
「トンコツラーメン食うか?」

・・・などなど。


コージは誕生日になると何故かもてもてだった。
他の団員の比ではないほどに、祝われるし物をもらう。
コージ本人には思い当たる理由がないため、首をかしげることになるが、貰えるものはありがたく頂くことにしている。
毎年続けば慣れもするし、大体がみなささやかなもの(下心付き)だ。

シンタローがなにか寄越した場合は無茶振りの前触れなことが多いし、科学者どもには何度となく実験台にされている。
普段トットリに珈琲を入れさせているミヤギの入れた珈琲(インスタント)は濃すぎたし、トットリの不思議な水は言うまでもなく胡散臭い。
津軽の林檎とどん太のトンコツラーメンは美味かったが、ウィローの魔法の薬は正直使いどころが分からない。

他にも親しくしている者達からは酒や酒や酒を貰い、滅多に活用しないデスクに山積みになっている。
お陰で部屋全体が酒臭いが、これも毎年恒例になったコージの誕生祝いにかこつけた宴会できれいさっぱりなくなるだろう。

客足が途絶え、コージが昼飯を食いに出ているうちに、ティラミスとチョコレートロマンスが、積み上がった荷物をてきぱきと運搬して片付けていく。
戻ったコージに、祝いの言葉と共に今日の宴会の時刻と場所を告げて去っていった。
優秀な秘書は雑用だって完璧である。


普段以上に広くなったデスクで嫌々仕事を始めたところに、アラシヤマがやって来た。
「コージはん、書類−・・・未だ出来とらんみたいどすな」
コージが広げている書類を見てため息ひとつ。
ちょっと寄越せとばかりに書類をぶんどり、ついでに席まで占領してしまった。
デスクワークの苦手なコージが逆らえるわけもなく、所在なさげに突っ立っていると邪魔だと睨まれる。

「いいお天気やし、外で散歩でもしてきなはれ」

言われるままに本部の外へと向かう途中、ミヤトリとグンマに捕まり、可愛らしい喫茶店の案内図をいくつか渡された。
居酒屋ならば活用もできるが何故喫茶店なのか、首をかしげつつ出入り口にたどり着いて、ようやく彼等の意図に気がついた。


出入り口で、最愛の妹が手をふっている。






「で、書類は?」
「これどすvコージはんの書き間違いも全部直しましたんえ〜誉めておくれやすぅシンタローはんv」
「あーはいはい。おーいミヤトリグンマ、コージはちゃんとアレと会えたんだろうな?」
「抜かりはねぇべスンタロー!」
「女子高生が好きそうな喫茶店も教えたけぇ、お膳立てはバッチリだっちゃ!」
「僕の見つけた穴場なんだよ〜。コージの誕生日だから特別にね!」
「む、そのために宴会の時間も遅めなのか。珍しく気を使ったのだな、シンタロー」
「うるせぇよ」


わいわいと騒ぐ総帥たちを尻目に、秘書たちが宴会様に部屋をセッティングしている。
「なぁ、コージさんの誕生日って、毎年盛大に祝うけど、理由でもあるのか?」
「ああ、あの人同期の中じゃ一番年上だろう?士官学校時代、だれかが誕生日だっていえば酒やら遊びやらで面倒見てたらしいぞ」
「へぇ、みんなの兄ちゃんってかんじかね、今回は本当の妹も来たらしいし・・・と、よし」
「総帥!飾り付け完了しました!」
「おっ、サンキュー!よっし、俺たちもはじめるか!」

あとはシンタローの指示のもと、みなでつまみやケーキを作るだけである。

時間はたっぷりあるのだ。毎年のそれよりもさらに豪華な料理になることだろう。






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二―二格好いいよ二―二。皆の兄貴だよ二―二。