トットリの様子がオカシイ。


ミヤギがその事に気がついたのは、パプワ島から帰ってしばらくたった頃だった。

特戦部隊との戦いでの怪我が痛むのかとも思った(なんせトットリはリキッドにやられていた分だけダメージが大きかった)が、それはタカマツ に否定されてしまった。
そもそも前線に立つ自分達は多少の怪我には慣れているし、忍者であるトットリは中でもかなり我慢強い。
弱味を見せまいと、怪我を隠すことさえ平気でやってのけるのだ(ミヤギ達がそれに気づいた場合、こっぴどく叱った上で絶対安静を言い渡すこ とにしているが)。

そういうわけで、怪我は関係ないらしい。
 
ならば南国が恋しいのかとも考えて(だってトットリはナマモノ達と仲が良かったのだ)、本人にそれとなく聞いてみたけれど、寂しくはある とは言うものの、それが原因でもなさそうだった。
自分が悄気ていたら、シンタローに悪いと言っていたし、本当に苦しいときはトットリはそれを言わない(そして厄介なことに、辛いのを隠すこ とがまた巧いのだ)。

そんなわけで、トットリの様子がオカシイ原因がわからず、ミヤギは一人でもやもやしていた。
逆にトットリに心配されるくらいに。
ちなみにコージやシンタロー、アラシヤマ、グンマ達はそんな二人を見て呆れていた。
 

それからさらにしばらくして。
トットリの怪我が完治し、久しぶりに戦うことになったとき、その姿を見てミヤギは首をかしげた。
トットリは普段通りに仕事用の忍者服を着ていたが、いつもの赤いスカーフをつけていなかったのだ。
どうしたのかと問えば、パプワ島での戦闘でボロボロになってしまったのだと言う。
首がスースーして変な気分だと、何でもないように笑っている。
本人の言う通り、普段は見えない首筋が見えている。
別にそれだけで大したことはないのだが、何か大事なパーツが無くなったような気がして、 ミヤギは落ち着かなかった。

 
 
そしてトットリの誕生日の日。
相変わらずトットリの様子はどこかオカシイまま、ミヤギはその原因が分からないままだったが、誕生日である。
ちなみに一月にあるミヤギの誕生日は、毎年トットリが中心になって、仲間が豪勢に祝ってくれている。
ミヤギとしても、(たまに忘れることもあるが)トットリを祝いたい気持ちは人一倍なわけで、今年はきっちりプレゼントを用意していた。

赤いスカーフである。

南国で駄目になってしまったものより、長くて丈夫な生地のものを選んだつもりだ。
忍者といえばたなびくスカーフ(もしくはマフラー)が鉄板アイテムだろう(とミヤギは信じている)し、トットリはあれ以後スカーフを巻いて いなかったから、その姿を見ていて落ち着かなかったのだ。

袋を開けて赤いスカーフを見たトットリは目を丸くして、そのあと微笑み、涙ぐんで礼を言った。
ミヤギはトットリの首にそのスカーフを巻いてやり、ようやく落ち着いた気分になったのだ。
 
前にしていたスカーフは、師匠にもらった宝物だったのだと、トットリは言った。
この新しいスカーフも宝物だと笑うトットリは、すっかり元気になっていて、ミヤギもとても嬉しくなった。

仲間達は幸せそうに花を飛ばす二人を眺めて、安心したように視線を交わしたのだった。





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と、いうわけで今更なスカーフネタ。
南国のころにあのスカーフは師匠にもらった宝物だという設定があった気がしたので、PAPUWAで変わってて、デザインには萌えたものの 「?」と思ったんですよ。
で、あれが今度はミヤギくんからのプレゼントだったらいいな!って!!!
きっとトットリは泣いて喜ぶぜ!     (10.2.12.生存報告に書いた文です)